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わが子を医学部に入れるなら知っておきたい4つのこと

こんにちは。
今日はわが子を医学部に入れるなら、というテーマで受験についての記事です。

もし、お子さんには将来お医者さんになってほしいな
とか
子どもが医学部に行きたがっている
という親御さんがいましたら是非参考になればうれしいです。

お金の話

まずは、とっても気になるお金の話から始めましょうか。
国公立の医学部になると、入学金が約30万円、授業料が年間約50万円が一般的です。
全体的な補助金の見直しなどもあり大学によって10万円~20万円/年の値上がりも今後考えられるといわれていますが、6年間総額で約350万円程度と考えておいてよいでしょう。

さて、問題の私立医学部ですね。
学費は近年値下げ傾向にあるものの6年間総額で約2000万円~2500万円といったあたりが平均的といえるでしょう。

2019年時点で最も授業料が安い私立は国際医療福祉大学という大学です。
こちらは近年新しく医学部が開設されたため、現時点で卒業生はおらず、これからの成長が期待される大学です。
英語にとくに力をいれているようで、在学中に留学やアメリカ版医師国家試験のUSMLE受験が必須などまさに時代を感じさせる大学です。
授業料は6年間で19,100,000円と私立大学の中では破格となっていますが、それでも1900万円はかかってしまうわけですね。
因みに最も高い私立大学としては岡山県にある川崎医科大学で、総額約4500万円となっています。

入学金は学校によりさまざま。
慶応義塾大学で20万円、順天堂大学で200万円となっているように大きな幅がありますね。
これは入試の結果が出て、合格となる場合に期日までに払う必要のある費用で、
入学の権利を担保するための必要経費となります。

入学した場合には初年度の学費に補填することが出来ますが、入学辞退の際には入学金の一部もしくは全額が返還されない、といったケースもあるので注意が必要です。

これだけ高いとやっぱり不安になりますね。
実際、ある程度の余裕がないと子どもを私立医学部に行かせるのは難しい選択です。

指定の地域で卒業後、一定期間以上勤務すること(いわゆる御礼奉公ですね)を条件に学費を大幅に免除できる大学もありますし、近年は奨学金の幅広くあります。
そのため、一般サラリーマン家庭でも十分に私立医学部に入学可能であると謳うサイト、雑誌も散見されますが、一個人の意見としては反対です。

後程説明しますが、かかるお金はこれだけではないですし、20代で2000万円オーバーの借金を抱えてしまうことにもなりかねません。
また、こちらも後程説明しますが、それだけの金額が簡単に返せるほど医師は高給取りではありません。
そのため、学費の問題がある程度クリアできるのでなければ私立医学部はおすすめできません。合格難易度がさほど変わらずに、国公立医学部も進学可能ですので迷わずそちらを選択すべきと考えます。

そして先ほどのかかるお金はそれだけではない、という話。
念のためですが、寄付金ではありません。寄付金の強要や裏口入学といった話は基本眉唾と思ってもらって構いませんのでご安心ください。

これは入学前の受験にかかる教育費用、入学後にかかる生活費、教育費や交際費、また実習などで使用する物品の購入費用などです。
中学高校の塾・参考書費用は当然掛かりますし、受験料(大学によりますが、私立大であれば一校5万円前後)もかかります。残念なことに浪人になれば予備校代もかかるでしょう。
当然ばらつきはありますが大体、医学部進学塾などでは年間約100万円程度が必要となるといわれています。

その後の費用に関しては本人が稼ぐことが出来れば一番よいのですが、参考書で年間数万円、国家試験や模試受験費用で数万円、聴診器やペンライト、白衣など購入して数万円と正直大学生のバイトではなかなか賄える額ではないでしょう。
これも後で紹介しますが、家庭教師のバイトもそこまでではありません。
基本、保護者の援助があって可能になると考えてください。

そして万が一、留年したら・・・
お分かりですね。
しかも、こちらも後程登場しますが留年はまったく珍しいことではありません。
あっけなく留年しますし、中には卒業できないということも…
こればかりは本当に恐ろしいですね。

また私立医大であれば大病院や大企業の御曹司もなかにはいますし、医者家系の家庭や会社経営者の家庭など比較的裕福といわれるレベルの家庭の子供たちが同級生となります。
そのため、”ふつう”のレベルが高くなり、交際費なども一般的な大学生と比べるといくらか高額になる可能性も考えられます。

すべてではないですし、お子様の性格にもなりますがそういった同級生の中で毎日バイトを頑張って節約しながら勉強も頑張って留年しないよう試験も合格する、というのはなかなか波の努力では務まりません。

そのため繰り返しになりますが、よっぽどの覚悟がお子様ご本人にないと、奨学金や学費免除を完全にあてにしての私立入学はおすすめできないと考えます。

以上、現実的なお金の話を紹介しました。

  • 国公立大は約350万円、私立大は2000万~2500万円程度
  • 医学部受験塾などは年間100万円程度
  • 入学後、年間数万円の教育費+医師免許準備費用+世間より高額な交際費

偏差値の話

こんどは、受験のお話です。
うちの子は馬鹿だから無理、とあきらめるのではなくて偏差値や難易度をしっかり理解して医学部受験を検討してみてください。

医学部の偏差値が高いのはあまりにも有名ですね。
最難関といわれる、東京大学理科Ⅲ類の偏差値が76といわれ、
私立大学であっても偏差値65は必要になるといわれる医学部入試。

これだけ聞くとなんとなくお医者さんって頭いいなあ、となりますね。
もちろん(?)、そんなことはありません。

早稲田慶應、上智大学などと比べて難関であるか、と言われると一概にそうとはいえません。

まず、偏差値の原則は”ばらつき”であるということです。
そのため平均点が10点のテストで高得点をとれれば時には偏差値が100を超えることもありますし、80点でも平均点が高ければ偏差値はその分低くなります。

大学の偏差値はどうやって決めているかというと、予備校で実施した模試のデータに基づいて、その後実際その人がどこの大学に合格あるいは不合格だったかを追跡して決定します。

つまり、とても簡単にいうと模試でいい成績だった人(例えば偏差値65の人は)は偏差値65の医学部に合格する可能性が高い(大体の場合60%)ということです。

対して、難易度とは概して、倍率と出題傾向により規定されます。
要は、どれほどの人数が受験するかということと自分が得意な問題が出るかどうか、ということです。
自分と同じような人たちが受けているとしたら、倍率が高ければ1つのミスが命取りになりますね。もちろん、得意な出題傾向であれば、より簡単に試験をパスすることができます。

そして、これらとともに重要なのが医学部入試の傾向は基礎重視ということです。
模試のような基礎問題が多く出題される試験と医学部入試は似たような傾向をもっているといえます。

これらのことから、
医学部入試は模試と出題傾向が似ているため偏差値は高く出るが、
基礎問題ができる、というだけで応用問題が得点できるかどうかは判断できず、医学部以外の難関国立大・私立大学と比べて高難易度であるとはいえない、ということが分かります。

すなわち、基礎問題(模試)さえできれば多くの医学部に入学できる、ということです。
頭がいい、というわけでは残念ながらなかったのでした。

当然、学校によっては応用問題を出題する傾向の大学もありますし、
東大京大の医学部などは特に、ほかの学部と問題は同じで高得点が必要、という点でもこの限りではありません。

しかし、偏差値が高く見えるだけで実は基礎問題さえできれば医学部もまったく夢じゃないよ、というお話でした。

偏差値が高い≠難易度が高い
基礎問題の出題が多い医学部入試では、基礎を抑えれば十分合格可能

大学生活の話

今度は、入学後。
大学に入ったらどんな生活なのかについてご紹介しましょう。

まずは、勉強の話から。
一般に、”入るのは難関、出るのは簡単”といわれる日本の大学という例にもれず、入ってしまえばそこまで勉強漬けの生活ではないです。バイトや部活、遊びなど結構自由な生活ができるでしょう。アメリカやヨーロッパの医大生はとにかくすごいようなので興味のある方はYouTubeでmedical student vlogなど検索してみてください。

このあたりも世間のイメージと少し異なるところですかね。

ただやっぱり専門的な大学であるので、ほかの学部と比べると相当量勉強は必要となるでしょう。
基本は大学一年生で一般教養といって英語や数学、化学に物理なんかも学びます。
場合によっては、情報の授業だったり社会の単位があることも。

最近、医学に特化した教育への見直しで一般教養が少なくなっている流れもありますが、この先もおそらくなくなることはないでしょう。
この1年間はほとんどふつうの大学生活と変わりはないと思ってよいでしょう。
ただ、生物の授業に関してはやや専門的な内容を勉強する傾向にあります。

そして、大学2年生から少しずつ医学を学んでいきます。
生理学というからだの仕組みを学ぶ学問や発生学という人間がどのように形作られるかを学ぶ学問など、基礎医学とよばれる医学の基本を勉強します。

有名な解剖実習もほとんどが2年生に行われますね。
この解剖から、実際に目に見えるような”医学”を勉強するようになり分子レベルから始まって少しずつマクロな視点で身体を見られるように勉強します。

そして3年生、4年生となるにつれて内科学や外科学といった所謂内科だったり外科だったりを勉強するようになります。

4年生のうちにCBT試験およびOSCE試験という準国家試験を受験して、4年のおわりから5年生はじめからはじまる病院実習に参加する資格を得ることになります。基礎医学から内科外科などの臨床医学、そして模擬診察を通じて、実際の患者に接して大丈夫なレベルかを判断するためにこの試験を必ず通過しなければなりません。

そのため、ここで不合格となるともれなく留年ですね。
実は再試験というのが医学部の試験では伝統的にあって、このCBTおよびOSCE試験まではもれなく再試験が存在します。
ただ通常の試験と異なり、準国家試験という扱いであるため再試験は1回のみ、そして約3万円と高額な再試験となっています。

通常の試験はというと再試験があって、それがだめならいわゆる落単といって再履修となりますが、すべての科目が必修であるために翌年に持ち越せる科目数に限界があるのです。そのため、毎年留年の可能性がある、というわけですね。
先ほど留年がより一般的である、というお話をしたのはこのためです。

そして、晴れて合格すると臨床研修を実際に病院で行います。
このときできることは、大学により異なりますが採血や点滴処置の介助などの基礎的なところのみ指導医のもと行うというところが多いようですね。
主に5、6年生で病院実習をしながら、最終学年の2月に受験する国家試験の受験勉強を行います。
CBT試験もそうですが、量はとにかく多いです。
参考書として積み上げると1メートルは超えますし、到底一度に運びきれる量ではありません。
最近はビデオ講座などが普及していてiPadに入れてもちあるくという学生も増えてきています。
これだけの量を覚えきれるの??と思うかもしれませんが、

覚えます。

とはいっても国家試験は選択肢による記号回答式の試験なので隅から隅までというわけではありません。
また、試験範囲が広いだけで病態を深く理解していなければ解答できない問題はそう多くないためなんとなく覚える、といったイメージですのでそこまでハードではないでしょう。

ただ圧倒的に範囲は膨大なので外から見ると大変な勉強量ではありますね。
これに関しては2年生頃から徐々に試験範囲がふえていって、学生は感覚が麻痺してしまっているというのもあるでしょう。

よく試験合格率が9割前後のため、医師国家試験の難易度は司法試験などと比べてもはるかに低い、という話がありますが、これは半分間違いです。
ひとつに受験する層が医大生のみであるということ、またその中でもさらに卒業試験という試験を課すことで受かる見込みが少ない生徒をその時点で落第させて受験資格をなくしているということがあります。これは、自大学の国試合格率を上げて入学者を増やす、という役割ももっていますので合格率だけでなく受験者数も注意して調べてみるといいでしょう。

そして、なにより2年生からのテスト勉強で慣れているため下手をすると2年間しっかり試験対策をしてから臨む学生がいるなど、真面目な学生が多いことで、試験の平均点が上がっていることがあります。そのため、純粋な難易度という面では他の国家試験に劣る可能性は否めませんが、合格という面で要求されるハードワークさでいえばかなりシビアな試験ともいえるでしょう。

国家試験を合格すると、ようやく卒業となります。
この時点で6年間で卒業できるひとというのは、意外に少なくて大学にもよりますが、半数程度になっているところもあるようです。
留年者や進級のしやすさ、国試合格率(受験者数含め)など総合的にみて受験する大学を選ぶとよいでしょう。

勉強編はこちらでおわりです。
すこしですが、アルバイトと部活の話をしてここは終わりにしましょう。

まず、アルバイトですが、なかには時給5000円以上の家庭教師のバイトをしている学生もいますが求人も限りがあるため、一時期ほど医大生のアルバイト収入は少ないでしょう。
授業や実習があるため、定期的なシフトを組むのが難しいという理由で飲食で働く学生も他学部に比べると少ないです。
ほとんどが家庭教師、予備校教師でしょうか。
高時給のアルバイトは数が少ないため文字通り争奪戦です。
なかには仲介所を通さずに個人で契約することで高給を実現している学生もいるようです。

そして、医学部といえば部活ですね。
8割ほどの学生がなにかしらの部活に属しており、実習やその後までも医者とかかわる機会には必ずといっていいほど話題に上ります。
医学部だけ独立した部活となっているところや、医療系学部のみの部活など比較的閉鎖的なのが”部活”の特徴です。

西日本では西医体、東日本では東医体と呼ばれる医大生の部活による全国(半分ですが)大会が代表行事で、金髪にしてみたり他部活の応援に行ったりとお祭りのように盛り上がるのも医大ならでは、といった風物詩となっています。

勉強はほどほどに忙しい
範囲はとにかく多いが、慣れていくので大丈夫
家庭教師や予備校バイト
ほとんどの学生が部活に属している

将来の話

さて、最後は医者になったあとの話。
ここまで長くなってしまったのと、今回は”医学部”がメインのためさらっとだけ紹介します。

まず卒業したあとは初期臨床研修という研修を2年間行います。
アメリカではレジデントといい、このときは医師というより研修医と呼ばれることが多いでしょう。

半分学生のような感じで勉強をしながら、ちょっとだけ病棟業務を手伝ったり、学生のときよりもアクティブに診察したりといった感じですね。
当直業務なども経験します。

この2年間はスーパーローテーションといって、ほとんどすべての科を一定期間以上経験して、幅広い診療知識を身に着けます。
病理解剖といって、亡くなった方の死因を解明するための解剖もこのとき経験します。
とにかく幅広く、いろいろなことを経験するのがこの2年間の初期臨床研修です。
このときはだいたい年収200万円から400万円前後でしょうか。
地方の市中病院などでは1000万円をこえる初期臨床研修もありますが、ごくいちぶです。

そして、このあとは後期研修医あるいは専攻医として通常3年程度勤務になります。
これはある程度規模の大きい指定病院で、テクニックや知識を学び「専門医」という資格をとるための研修になります。
初期研修とは異なり、分野をある程度しぼったのちに深く狭く、経験を積んでいくイメージです。
初期研修中はアルバイトをせず、勉強メインという生活となりますが、後期研修からはほかの医療機関でアルバイトをすることが許可されます。
そのため、週2日の休みのうち1日を外の病院でバイトをして、収入をアップさせる人が多いです。
年収は病院によってばらつきますが、東京都内では500万円程度が平均のイメージでしょうか。
これにアルバイトの収入が加わりますが、アルバイトは概して割がよく、週1日であっても年収にして300万円前後のプラスが見込めます。また、当直勤務のアルバイトも人気です。

そのため、週6日勤務で年収1000万円程度が勤務医の平均となるのですね。
このまま重要なポジションについたり、開業したりしなければ基本的に給料は変わりません。
開業医の平均年収は約2000万円程度と勤務医と比べても高給ではありますが、クリニック経営の手間や近年の開業医増加などから閉院のリスクも少なくはなく、開業に踏み切るというのは勤務医にとって大きな決断といえるでしょう。

そのため、冒頭でお話した、医師がそれほど高給取りではなくなっているという話になってきますね。
通常の4年生大学と異なり、2年間社会に出るのが遅いうえに学費も高いです。
私立大学ではペイできるかどうかも微妙なところとなってくるのが厳しい現状です。

医師は大変やりがいのある仕事ですが、お金が欲しいというために選ぶ仕事ではもはやなくなっているともいえるでしょう。

勤務体制としては、近年の働き方改革により、大きく改善されている途中といった状態でしょうか。まだまだ10日以上の連続勤務や当直業務明けの通常業務、事務仕事など改善すべき点は多いですが、ドラマのような徹夜しながら何時間もボロボロになって働くようなことはないです。
これからさらに、働きやすく、そしてやりたいことが出来る労働環境の整備が進むことでしょう。

卒後2年間の初期臨床研修
専門医資格をとるためにはその後約3年間の後期研修
週6日勤務年収1000万円が勤務医の相場
開業となると収入アップが見込めるが、リスクもある

さて、以上が医学部~医師としての流れでした。
私の経歴などについてはまた後日お話させていただく機会があれば紹介しますが、一般的な流れとしてはこういった現状です。お子様が医大に進まれるあるいは考えるきっかけになればと思います。

医師は本当にやりがいのある仕事です。
年収や労働環境がもっといい仕事は山ほどありますが、きつい勤務に見合う以上にやりがいのある仕事であるのは間違いないでしょう。また、海外などの話にはなりますが、社会的な信用もまだまだ高い職業といえます。

これから今まで以上に幅広い職業選択が可能な時代になっていくとは思いますが、目の前の人を救いたい、と思って厳しい道であっても進まれようとしている方がいる限り、医師もまた誇りややりがいをもって職務を全うできるのです。

ABOUT ME
そう先生
慶應義塾大学卒の都内勤務医。医療情報を一般の人にもわかりやすく、そして「とにかく健康に生きる」をモットーに日々情報を発信していきます。フリーのライターをしながら教育ベンチャーのお手伝いなんかもしています。